母のお弁当

料理上手だった母は、

私が中学に入ってから結婚する1週間前までOLを辞めるまで、

1日も欠かさずにお弁当を作ってくれた。


中学に入って初めてお弁当を作ってくれた日。

帰宅してお弁当箱をポンとテーブルに置くと、母が言った。


お弁当箱を開けてごらん。


開けて見せると、蓋についていたご飯粒を見て、


お弁当はね、蓋についているご飯粒から食べるんだよ。


そう言った。


次の日からお弁当箱の蓋についたご飯から食べ、帰宅し毎日のように洗い桶につけてごちそうさまを母に伝えた。


母のおかずは友人にも好評で、良くおかずを取り替えっこして食べたりした。


〇〇ちゃんは、さつま芋の煮たのが美味しいって言ってたよ。


と伝えると、次の日には違う別の容器にたっぷりとさつま芋の煮物が添えられる。


みんなで食べな。


それ以外にも、しらたきとタラコの和え物、かぼちゃの煮物、焼きそば、玉子焼き、炊き込みご飯等沢山のものを持たせてくれた。


友人たちにもとても人気だった。


私も母になり、今では子どもたちも成人してしまいお弁当を作ってやることはなくなってしまったが、


食べ盛りで部活をしていた子どものいくつものお弁当作りはとても楽しかった。


母のような味は出さずじまいだが、それでも子どもたちは喜んで食べてくれた。


今日のお弁当美味しかったよ


その一言がとても嬉しいのだと作る立場になってやっとわかった。


もっともっと母にごちそうさま、美味しかった、ありがとうを伝えておけばよかった。


孝行したい時に親はなし

後悔先に立たず


どちらも亡き母に教わったが、


お母さん、貴女の娘は年齢を重ねる毎に痛感していますよ。


美味しいお弁当、毎日ありがとう。


空の貴女に届きますように